NIYONIYO ほっと・ねーちゃー
春の妖精に出会う時
〜スプリング・エフェメラルと呼ばれるものたち〜
刈田悟史
![]() ツマキチョウ |
背骨の芯まで凍りそうな寒さが少しづつやわらぎ始めると、いつのまにか春の景色がここそこに見え隠れし始めます。真っ白な霜を背負って、生き物に背を向けていた大地も、パステルカラーの新緑に装いを変え、よく見ると、小さくても可憐な花達があちらこちらに彩りを添えて、春の訪れをささやきかけています。暖かさの中に、少しだけ冬の名残が居座っているこの時期、まっさきに春を告げる生き物たちを知っていますか?
「スプリング・エフェメラル」。日本語にすると、春の妖精たち。そんな可憐な名前をもらった彼らは、早春のホンの一時だけ、私達の前に姿を披露してくれる、素敵な生き物たちです。
春を告げる妖精たちにはいろんなグループがいます。 よく知られているのは、スミレやカタクリなどの花。でも、『春の妖精』の響きに一番似合っているのは、野を舞うチョウたちかもしれません。
![]() ミヤマセセリ |
もちろん、春一番で飛ぶチョウが全て、『妖精』の名誉にあずかるわけではありません。
意外かもしれないけれど、成虫のまま、あのきれいな衣装を身に着けて、林の片隅でひっそりと冬の寒さに耐え忍ぶ仲間や、一年中飛び交う仲間もたくさんいます。でも、残念ながら彼らは…。
その名誉に浴するのは、ホンの一時だけ、例えるなら雨上がりの虹のように、素敵な姿を披露してくれて、夏の気配が混じる頃には、いさぎよく舞台から降りている、そんな仲間たちです。
最も名前が知れわたっているのは、独特の雰囲気を持つギフチョウでしょうか。素敵な衣装をまとった、ちょいと毛深い里山の女王。まだ肌寒い頃に、ピンク色のカタクリの花を訪れる姿は、なんとも神秘的な早春の一幕です。熱狂的なファンもたくさんいる彼女たちは、とても環境に敏感。すでに各地から姿を消してしまった、失われつつある自然のシンボルでもあります。
身近に見かけられるのは、ひらひらと可憐に飛ぶツマキチョウでしょう。モンシロチョウにちょっと似ているけど、羽の先がとがっていて、オスはそこが鮮やかなオレンジ色に染め上げられています。
意外に都会の中でも、林がしっかり残っている場所なら、まだまだ見ることができる、ちょっと身近な春の妖精。楚々とした美しさに感動して、近くで見ようとしても、なんだかじらすようにひらひらと、とまりそうでとまらないまま、やがて遠くに飛び去ってしまう。ちょっとイジワルな妖精です。
![]() コツバメ |
ほかにも、地味な色の羽を広げてとまるミヤマセセリや、体を傾けて日光浴する不思議なコツバメ、
半透明の白い羽を持った大柄なウスバシロチョウなど、早春の妖精達は何種類かいます。妖精という肩書きにふさわしく、ほとんどは豊かな自然が残っていなければ見られませんので、
もしも身近に彼らが飛んでいたら、そこは素晴らしい自然の場所の証拠でもあります。
彼らだけをえこひいきするわけではないけれど、彼らに出会いにいけば、きっと一緒に、 たくさんの生き物たちと、抱えきれないほどのビックリに出会えること間違いなし。アポもいらなければ、手土産も不要。暖かな日差しを浴びながら、春の妖精たちに会いにいってみませんか?
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大学在学中、「環境サークルなちゅれ」に在籍したことをきっかけに、自然を見つめる面白さに目覚め、定職にもつかず、生き物の世界をふらふらしている。公園の警備員をやっているほか、ことあるごとに鳥を見たり、魚をおっかけまわしたり年齢不詳の時間を楽しんでいる。 |