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まじめに生きろ!? 〜いもむしの伊達者達〜

刈田悟史

アオバセセリの写真です
アオバセセリ

 「いもむし・けむし」というと、ゴキブリ、ナメクジの次くらいに人気のナイ生き物でしょう。女の子は金切り声を出し、子供は叫び、おばさんはツリ目になって、 手に届く限りのものが宙に舞う。そんな理不尽な対応に、先祖代々ずっと甘んじている存在です。 なぜかと考えるに、ヤツらのなまめかしい肌ツヤ、モゾモゾ感、うつろなまなざし、突き詰めればワケのわからなさが不人気の原因でしょうか。

 でも、当然ながら彼らは人様を脅かす意図もなく、むしろ「かまって欲しくないなぁ」なんて思いながら日々を過ごしているハズ。「いもむしだって愛すべき存在」なんて主張 したら、いもむしよりもつらい対応が帰ってくるのは目に見えているし、それならいっそのこと、伊達者達をずらりと並べ、ド肝を抜いて、ショック療法とまいりましょうか。

スミナガシの写真です
スミナガシ

 自然の造形美は、前衛芸術家も、パンク野郎も、チンドン屋も裸足で逃げ出すくらいあけっぴろげで、奇妙奇天烈。あるべき枠を気にせず、おおらかです。神様はきっと、ものすごく芸術のセンスがあるのか、 全くないかのどちらかなのでしょう。ありとあらゆる色をべったり塗りたくり、まだら模様、縞模様に幾何学模様、金属光沢をまぶしてみたり、四角い、丸い、好き勝手な方向に突き出し、あるべきところはすっぱり省略…。天下御免で、なんでもありです。

 ピカソもダリも、自信をなくしそうなヤツラが、やっぱり意外に身近にいます。よりどりみどりのラインアップから、ちょいと一例挙げてみれば、こんな感じ。

ウコンカギバの写真です
ウコンカギバ

 たとえば、アオバセセリ。黒地に黄色いストライプを大胆にあしらった体に、ダイダイ色の大きな頭にたくさんの青い星。

 お次はスミナガシ。茶色に緑の大胆な色使いに、トランプのジョーカーのお株を奪う、 大胆な頭の模様と大きなツノ。

 そのくせ大人になると、 ダイダイ頭のアオバセセリは緑の羽が妖艶な、ジョーカー頭のスミナガシは水墨画のような味わい深い羽の、それはそれはきれいなチョウチョになります。

 造形美じゃ負けてないのは、ウコンカギバ。普通のいもむし型がベースなのに、背中のほうから好き勝手に、にょきにょきと、四方八方めがけて、ねじくれたり、カールしたりの大騒動。 

 アゲビコノハもなんとも大胆なポーズ。背中の目玉は当然フェイク。本当の目玉は針先ほどしか ないくせに、そっくり返る堂々さ。

 「やめろヨ」といいたくなるこいつらは、今度は 大人になると地味な蛾の子供たちです。にょきにょき野郎のウコンカギバは茶色一色、目ン玉野郎のアケビコノハは葉っぱにそっくりの蛾になります。

アケビコノハの写真です
アケビコノハ

 どいつもこいつも親はみんな地味だったり、可憐だったりするくせに、子供のひねくれ方ったらありゃしません。ツッパリ野郎やコギャルが頭をかすめ、「もしかして反抗期?」なんて思ったりして。 ついつい「まじめに生きろよ」なんて諭したりしたくなるけれど、きっとやつらはマジなんですよ、これでも。

 こいつらは、ちょっと郊外の森にいって、じっくりさがせば 出会えます。そして、さらなる伊達者達がたくさん、自慢の衣装をまといながら、あなたの来訪を待ってます。そして、いもむし に限らず、あなたの周りの林の中には、思い思いにドレスアップした、ヘンテコ物件であふれかえっています。

 散歩のついでに、ちょっとじっくりと、草むらを、茂みを、木々の枝先をのぞいてみませんか?ここにも、そこにも、驚いたり、吹き出したりしてしまうヤツらがテンコモリで、愉快になること請け合い。

 ほら、もう、いもむしを見たくらいで、いちいち悲鳴を上げてやろうなんて気分には、とてもなれないでしょう?


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 大学在学中、「環境サークルなちゅれ」に在籍したことをきっかけに、自然を見つめる面白さに目覚め、定職にもつかず、生き物の世界をふらふらしている。公園の警備員をやっているほか、ことあるごとに鳥を見たり、魚をおっかけまわしたり年齢不詳の時間を楽しんでいる。