NIYONIYO ほっと・ねーちゃー
〜冬の虫たち〜
刈田悟史
ピンとほっぺたをつねられるような寒風の中、野山を歩いてみると、葉を落とした木々のこずえから鳥達の声だけが響いています。夏の間あんなに飛び交っていた虫達の姿は、どこにもありません。夏は気前よく目の前に飛び出してくれた彼らですが、冬になると今度はこちらから訪ねていかなくてはならないのです。
成虫のまま堪え忍ぶもの、卵や蛹で乗り越えるもの、幼虫のままどこかに潜り込むもの……過ごし方は様々ですが、実にたくさんの虫が厳しい季節を健気に暮らしているのです。林の中には、夏とは違う姿だとしても、同じだけの種類の虫が棲んでいるのですから。
![]() ナミテントウ |
たとえば、路端の石っころを転がしてみます。すると、テントウムシの仲間など、たくさんの虫が石の屋根の下で眠っていることが分かります。石と土の隙間は防風防雨も完璧な上、そこらの安普請とは違って頑丈そのもの。
なかなかよい物件に違いありません。私たちにとっても、持ち上げてひょいと
のぞき込める、うれしい観察ポイントです。
けれども、少し大きな虫になると土の奥まで潜り込むものもたくさんいて、幸運が味方しない限り、彼らに出会うことは出来ません。
![]() コガタスズメバチ |
お次に、これまた路端にころがる倒木をのぞき込んでみます。木の裏にも、そして木の皮の下にもたくさんの虫が息を潜めています。ハチの仲間のように成虫ですごすもの、カブトムシのように幼虫ですごすものと、その姿も様々です。
石の下も、木の下も、路端でひょいと覗き込める、お手軽な冬越し観察の
ポイントです。だけど、冬をやり過ごしているのは虫だけでなく、ムカデやクモなども同じです。足の多いヤツらがお嫌いな向きには、ご注意を!
![]() ウラギンシジミ |
隠れ家は足元だけとは限りません。
まだ葉を残す木々をじっくり見ると、葉の裏にじっと止まっているチョウを見つけました。卵やら蛹やらで過ごすチョウも多いのですが、成虫のままじっと潜んでいるチョウも、意外に多いのです。時に、真冬の厳しさがついゆるみ、小春日和が顔をのぞかせると、ねぐらから動き出した彼らにびっくりさせられることもあります。
![]() クロスジフユシャク |
吐息が白煙のように昇る日に、降り積もる落ち葉の上をチラチラと飛んでいく姿をみつけたら、それはきっとフユシャクの仲間。何を思ったのか、冬の寒い時にだけ成虫になるひねくれものです。
落ち葉や木の上では、忍者も顔負けの隠れ身の術を見せてくれる、地味な色合いの彼ら。
面白いことに、彼らのメスには羽のない種類がたくさんいます。そう、彼らにとっては、今こそが恋の季節。いとしい恋人を探して寒空の中を舞っているというわけなのです。
そっとのぞいた彼らの冬には、自然の厳しさと、彼らのたくましさが、どっさり詰まっているような気がします。静かにのぞきこんだら、頑張れよってちょっぴり
心の中でささやいてから、そっと元通りにしてあげるのが、冬の観察のエチケット。
やがて、3月にもなれば、冬の眠りから覚めた虫たちが外に飛び出してきて、春のにぎわいへとうつろっていきます。
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大学在学中、「環境サークルなちゅれ」に在籍したことをきっかけに、自然を見つめる面白さに目覚め、定職にもつかず、生き物の世界をふらふらしている。公園の警備員をやっているほか、ことあるごとに鳥を見たり、魚をおっかけまわしたり年齢不詳の時間を楽しんでいる。 |