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ほっと・ねーちゃー
鳴く虫の世界
〜由緒正しき秋の音色〜
刈田悟史

エンマコオロギ |
秋といえば、まず何を思い出しますか?
運動会、真紅のモミジ、サンマの焼ける匂い、まんまるお月様、ススキ原を飛び交うアカトンボ…。
そんな中でも、由緒正しい日本の秋を語るのに欠かせないのが、秋の音色、虫の声でしょう。
そもそも、音を出す程度の虫は多けれども、メロディー性があって、「鳴く」という表現にふさわしいのは、セミとバッタの仲間だけ。実はバッタのほとんどは夏に鳴き始めていますが、セミが夏、バッタが秋のイメージを背負っているのは、鳴き声が暑苦しいか、涼しげか、その違いかも知れません。

スズムシ |
さてさて、バッタの仲間もいささか広ぅございまして、きれいドコロに美声の持ち主、逆にマッタク鳴かないものまで多種多様です。
およそ、きれいな声を響かせるのは、トノサマバッタのような、いかにもバッタらしい体型のものではなく、ツユムシやコオロギなどの仲間がメイン。文部科学省唱歌が教えてくれるように、ガチャガチャやらチンチロリンやら、多種多様な音色がずらりと用意されております。

クツワムシ |
「鳴く虫」の一番の有名児といえば、なんといってもスズムシでしょう。「リ〜ン」と響き渡る声は秋の代名詞ですが、よ〜く考えると、この声、
最近は街中でしか聞かれないことに気付いています?そう、広い草原が好きな彼ら、自然がとても豊かに残っているところ以外では、商店街のムシカゴで鳴くものになってしまいました。「チンチロリン」のマツムシもご同類です。
ほかに有名児といえば、キリギリスでしょうか。夏のイメージが強いコイツは、「鳴く虫」のイメージからは外れ気味の「ギ〜チョン」と賑やかな声を、まっ昼間から張り上げます。
同様に美しくない声の持ち主はクツワムシ。「ガチャガチャ」と鳴くその声は、集団だと少し騒音公害の様子すらのぞかせます。この2種類も、郊外でなければ見られなくなりつつあり、名は聞けど姿は知らぬ人が多いのでは。

アオマツムシ |
最も身近な美声の持ち主は、「リ〜リ〜」と涼しげな声を響かせるエンマコオロギ。
こちらは街中の公園でもまだまだ健在。それ以外にも、図鑑と取っ組み合いながら調べれば、
たいていの場所で、10種類以上の美声の持ち主が互いの技を競い合っています。
面白いのは、街中で「リ〜〜〜〜」と、うるさいほどの声を上げているアオマツムシ。
こいつは中国渡来の南蛮児で、街路樹を住みかに、都心でも見られるニューフェイスです。
先ほどお話した通り、鳴く虫は秋と限りませんが、味わい深いのは初夏。 ホタル飛ぶ頃、水辺の草むらから、キンヒバリが「リ〜〜」という素晴らしい涼声を谷に響かせる様は一聞の価値あり。ヒネクレモノでは、親のまま冬を越し、春早い頃から思い出したように鳴くクビキリギスなんてのもいます。
こんな風に、一口に「鳴く虫」といっても実は大所帯で、慣れなければ、声から種類をあてるなどというのは至難の技。とりあえず、そんなこと忘れて、ススキ原に降り注ぐ月光の下、そっと目を閉じ、体中に染み入ってくる虫の音をただ感じとる、というのもなんともオツなもの。
車の騒音さえ気にならなければ、近所の小さな公園でも、結構虫の音に出会えます。時には、浴衣に下駄をつっかけて、のんびり草むらを歩いてみれば、ようやく涼しくなった夜空に中秋の名月。道端に腰掛けて、虫の音色にただ聞き入れば、いつのまにか自分が秋の夜空に吸い込まれるような気さえしてきます。
食欲の秋ばかりじゃなくて、たまにはこんな由緒正しきは秋の一夜はいかがでしょうか。
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