ほっと・ねーちゃー

雑木林のお花見〜野山のお花見のススメ〜

刈田悟史

こぶしの写真です。
コブシ


 冬の厳しい寒さがほどけて、暖かい陽だまりが居座るようになると、すぐに春。チョウたちが舞い、鳥たちがラブソングをささやき、木々の葉が芽吹いて、野山が一面にパステル色に染め上げられる頃、 真新しいランドセルが川面に映え、街にはまっさらなスーツ姿が忙しく行き交い、にぎやかでピシッとした空気が、そこここに満ち溢れます。
 そんな頃、春ならではの自然との触れ合いとして、最もメジャーで、かつ市民権を得ているのは「お花見」。サクラを愛でるつもりで、とりあえず酒に呑まれ、酔客うずまいて喧騒の嵐という趣旨のズレ方は古来からの定番ですが、本来の趣旨は自然観賞にあったことは疑いもない事実。
 では、今年はちょっと目新しい『お花見』に出かけて見ませんか?

うわみずざくらの写真です。
ウワミズザクラ

 出かけるのは近くの雑木林。できれば、少しばかり開けた場所だと、なお結構。晴れた日の昼間、のんびりと歩きながら、雑木林の木々を眺めてみてください。 よくよく見ると、ハデから地味まで、各種趣向を取り揃えた花が咲いていることに気付くでしょう。
 実はサクラだけでなく、樹々の花は春先の4〜5月に咲くものがほとんど。葉が茂る前なら、風通しもよくて虫にも見つけてもらいやすいという精妙な知恵なのでしょう。
 地味に見えても、よく見るとそれぞれに清楚な美しさがあり、目を見張るような工夫があり、驚くほど細やかな造形がほどこされています。一つ一つじっくり見ながら歩けば、きっといつまでも飽きることはないでしょう。

こならの写真です。
コナラ

 ドングリで有名なクヌギや、紅葉で有名なモミジなどにも、きちんと花が咲くと知ったら、驚く人もいるかもしれません。
 でも、どんな植物でも子孫を残すために花をつけるもの。 春の雑木林をのぞきこめば、モミジは赤く、小さな花を葉の下に隠し、クヌギは黄色っぽい房のような花をたくさんぶら下げています。
 「これも花なの?」。そんな驚きも雑木林のお花見の醍醐味。ハデ好みでは、白くて大きく、芳香さわやかな花をつけるコブシやホオノキ、ブラシみたいなかわいい花をいっぱいつけるウワミズザクラなどなど、 スター選手に事欠きません。

 春の日差しの中をゆっくり歩けば、当然ゆったりした心地よさ。酔客の喧騒ではなく、鳥のさえずりをBGMにのんびり歩けば、足元には春のかわいい草花が微笑みかけ、チラチラと、妖精のような春のチョウたちも舞っています。

うぐいすかずらの写真です。
ウグイスカグラ

 世のサクラの根元には、きっと花見の席取り役が居座っているかもしれませんが、こちらはどこでもいくらでも見放題。 年中無休のサービスです。野山の樹々は次々と花をつけていきますから、気が向いた時に出向けば、新たな出会いがそのたびに、必ず約束されてもいます。
 そして、もしもお酒が呑みたくなったなら、静かに陽だまりに腰かけて、ポケットからミニボトルを出してちょっと一口。ほろ酔い気分のまま、陽だまりに寝転がってウトウトし、目覚めれば、また春の日差しの中に響く小鳥の歌。ぼんやり見上げると、空に白雲がながれ、さわやかな春風がそっと頬をなでていきます。
 街中の喧騒に包まれるばかりではなく、今年はこんなシブい、雑木林のお花見はいかがでしょうか。


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 大学在学中、「環境サークルなちゅれ」に在籍したことをきっかけに、自然を見つめる面白さに目覚め、定職にもつかず、生き物の世界をふらふらしている。公園の警備員をやっているほか、ことあるごとに鳥を見たり、魚をおっかけまわしたり年齢不詳の時間を楽しんでいる。