海藻アカモクの林に託す

インタビューを終えて

自分の居場所と生き甲斐

 佐々木さんには人を惹きつける魅力がある。インタビューをしていて、そう感じました。
 私は、未熟ながらも地球科学を学んでいます。いずれは人の役に立つような研究をしながら生きていく道を見つけたいという願いがあります。佐々木さんは、ある意味私の理想とする生き方を実践している方でした。県の職員という立場にありながら、松島の海を美しくしたいという願いのもと、その研究を続けてこられた方です。もちろん、松島の海を美しくするということは、仕事の一環でもあるでしょう。しかし、その目的を達成するために費やす時間は、一般的に言う"労働時間"というものをはるかに超えています。佐々木さんが言っていた言葉がとても印象に残っています。
「仕事とプライベートの境界?…自分でももう分からないな。どこなんだろう?」
そう言って笑った佐々木さんは、とても輝いていました。
「佐々木さんは、松島の海を美しくする仕事に生き甲斐を感じているからこそ、こんなに生き生きと活動ができるんだな」と実感した瞬間でした。
 仕事に生き甲斐を感じられる人。もしくは仕事を楽しめている人。こんな人は世の中に一体何人いるのでしょう?一人の人間にできることは限られています。いかに大きな理想や目標を持っていても、それを実現するためには様々な力が必要となってきます。人間社会というものを、一つの大きな機械のようなものであると考えると、ある人はエンジンであり、ある人は歯車であり、ある人は潤滑油であったりします。その中の一つでも欠けてしまうと、機械は理想的に作動しません。こんな風に考えた時、佐々木さんはエンジンのような方だと思いました。最初は少ない人数で始まった松島の海のプランですが、佐々木さんから話を聞くことによって、あるいは活動を耳にすることによって、多くの人たちが松島でのアカモク栽培への理解と興味を示し、協力してくださっているそうです。人を囲んで輪が広がっていき、一つのシステムとして作動し始めているのです。一人の人間が、自分から望んだ場所で人の役に立てる。こういう状況が、人が一番生き甲斐を感じられる瞬間ではないでしょうか?そして、このような活動を行うことができている、佐々木さんを初めとする方々を、とてもうらやましく感じました。
 松島の海を美しくするという目的を達成するには、まだ様々な障害があるかもしれません。しかし、更に人が加わることで、今までできなかったことが実現していきます。松島のプランは、これからも人の輪が広がっていくことで、更に一歩ずつ達成へと近づいていくのでしょう。そういった"人の力"が集まる場所を、今回のインタビューで見せていただいたと思っています。人が生き甲斐を感じながら生きている姿。それは、潔く清々しい姿です。それを見て、自分の目標が、より具体的に私の中に生まれた気がします。
【日高和帆】
地球の環境保全に興味を持ち、使命に燃えながら大学で地球科学を専攻。好きなものはラーメン、コーヒー、こたつ、鉱物、海、宇宙、ゲーム、音楽などなど。何にでも興味を示す猪突猛進型人間!?

 佐々木さんとは、一昨夏、取材で初めてお会いした。海藻アカモクで松島の海をきれいにし、さらにそれを収穫して売り出そうという一石二鳥のアイデアに惹かれて、その発案者に話を聞きに鉄筋コンクリート18階建ての立派な県庁舎を訪ねると、佐々木さんは長靴の中にスラックスの裾を押し込んで、腕まくりの姿。しんとしたフロアの端から端まで響き渡るようなトレードマークの大声で気勢を上げていた−。
 アカモクの発想もさることながら、佐々木さんのキャラクターは鮮烈だ。飲み屋で彼に出会った人間で、彼のことを覚えずにいられる人はいないだろう。あらゆる周囲を巻き込む求心力が彼にはあるのではないか。
 かくいう自分も、佐々木さんの魅力のとりこになってしまった一人で、以後、昼の松島や夜の赤提灯に同行する日々が続いている。
 どうして皆、彼のペースに巻き込まれていくのか。それは彼の大らかでまっすぐな人柄に拠るところが大きいのだが、今回のインタビューで佐々木さんが実に小学生の頃から40年にわたり"海をきれいにしなくちゃ"と一心に思い続け、今に至ることが分かった。
 ある時は解決策を見出せないまま排水基準を取り締まり、ある時は土木中心の行政に絶望し、またある時は漁業関係者の強烈な反対に遭いながらも、あきらめきれずに何度でも説明しに通い詰める。そんな一途な姿が人の心を動かすのではないか。
 こうして一生をかけて海の生態系を守ろうと格闘している人を前にすると、たかだか入社6年の自分が抱く日頃の仕事上の悩み−思い通りにできないもどかしさや瑣末なトラブル−など本当にちっぽけなものだ、という気持ちになる。
 インタビューは2時間超に及んだが、それでも佐々木さんの人生を伺うには短かすぎる時間だった。残念ながら、この続きはまたどこぞの赤提灯で、ということになりそうだ。
【豊田百合枝】
 バーボンと薩摩焼酎を愛する28歳。ゴーヤのお浸しに泡盛も譲り難い。仙台暮らしも3年(記者生活5年)になり、秋冬は欠かさず通った秩父宮ラグビー場からもしばし足が遠のいている。大学時代にロンドンで生活、IRAまたはIRAを装う爆破予告で、度々地下鉄の駅が閉鎖されるのを体験。その後、自分の通う大学近くでバスが爆破され、テロを初めて身近に感じる。

 「前例がない」「慣例でそうなっている」…役人というと、「失敗を恐れる」といったイメージを持ってしまう。個人としての責任を最終的に追わず、組織のルールを重視するとか…それで色々な問題が引き起こされてきたのも事実だろう。薬害エイズに対する厚生行政はその典型だった。
 以前、知り合いの教師からこんな話しを聞いたことがあった。高校のテストで、「公約とは何か、説明せよ」という問題を出した。生徒の回答の中に、「守られないこと」というのがあった。その教師はうーんと悩んだ末、丸をつけたという。政治不信の折からの話しである。話しは脱線したが、政治家にせよ官僚にせよ、一般的に「公」にいる人々への信頼感が損なわれている。そんな状態を、とても悲しく思う。彼らは本来、信頼感を最も寄せられなければならない存在のはずだからだ。
 県職員であると同時に、個人としても水質改善に関わっている佐々木さんの生き方は、とても新鮮だった。非常にシンプルな話しでもあった。海が好きで、海が痛む姿に心を痛め、「海をなんとかしたい」と、基本的にそれだけだと思う。だから、県職員の仕事と個人のワークは、海を軸にして完全に一体になっている。佐々木さんの顔が見える仕事なのだと思う。
 公の立場にある人が、自分の持つ権限と、立場と、専門知識をどう生かすのか。それは、影響力も大きく、人の生活を左右しかねない事でもあるだけに、とても難しい作業ではあると思う。そのとき指針となるのは、本当に自分の持つビジョンと、色々な人の価値観を受け入れる姿勢と、それらを調整していく上での感性だろう。佐々木さんは、海の水質という現場から離れないからこそ、みずみずしい感性をどんどん大きく育んでいっているように思う。ちょうど、海の流れにシンクロしているかのようだ。
【会田正宣】
学生時代、環境問題を研究するサークル「なちゅれ」を主宰。楽器や空手など四方八方手を出すが、身につかないことばかり。気の多いB型。今は中国語に取り組む。アイルランドのロックグループ「U2」ファン。記者。横浜出身。

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