NIYONIYO ほっと・ねーちゃー

夕焼け小焼けのアカトンボ〜秋の代表選手〜

刈田悟史

コノシメトンボの写真です
コノシメトンボ

 秋というと、どのようなイメージをお持ちでしょうか?
 涼しい秋風がススキを揺らし、振りかえると不思議なほど澄みきった秋空ごしに遠くの山々が紅葉の色に染まっている…。そんな、なんとも和風情緒にあふれ返るようなイメージを持っている人は少なくないのではないでしょうか?
 やがて、草むらから湧き上がる虫たちの鳴き声をバックコーラスに、中秋の名月がシャナリシャナリと上ってくる。現代の住宅事情ではなかなか望むべくもないけれども、できれば縁側にそっと座って、ゆっくりと流れていく時間を楽しみたい。
 そんな時、必ず引きたて役として、画面の端々にそっと添えておきたいのが、数匹のアカトンボ。今回はその名脇役に、ちょろっとスポットを当ててみたいと思います。

ウスバキトンボの写真です
ウスバキトンボ

 「アカトンボ」と一口に言っても、日本全体でなんと20種類近い仲間がいます。あなたの家の周りでも、おそらく5、6種類のアカトンボが、秋の気配をせっせと運んできているはず。名前など知ろうとせず、まずはのんびりと眺めるところから始めましょう。
 意外でしょうが、アカトンボとは「赤いトンボ」を意味しません。北方に住むムツアカネは成長すると黒くなり、関西には世界にもまれな「青い」アカトンボ、「 ナニワトンボ」が堂々と存在しています。ちょっとした池に行けば必ず見られる、全身真紅に染め抜かれたショウジョウトンボは、少し縁遠いグループなのです。
 やはり、外見から素性を判断するのはどこの世界でも危険なようです。

ナツアカネの写真です
ナツアカネ

 夏の陽射しも少し衰え始めた秋の草原を、飛び交う無数のアカトンボ。 多くの人が「秋」を感じる風景だと思いますが、こちらも実は「アカトンボではない」と言うと、いかがでしょうか。
 飛び交う影の正体は「ウスバキトンボ」。飛行力がとても強く、おまけに卵から1ヶ月ほどで親になるという驚異的な繁殖力を誇ります。毎年南方から飛んで来て発生を繰り返し、秋が世界を支配するころには北海道でも普通に見られる彼らは、寒さに弱く、やがて白い冬の訪れと共に死に絶える。冗談みたいな一方通行の生活を、毎年判で押した様に繰り返します。

ヒメアカネの写真です
ヒメアカネ


 彼らに負けないほど面白い生活をしているのは、アカトンボの代表格 「アキアカネ」。秋に沸いてくるように思われているアカトンボですが、 羽化するのは6月頃。田んぼにも住む彼らは、4月、田に水が張られるころに卵からかえり、6月、田の水が落とされ始めるころに親になるという都合のよいサイクルを身につけています。

 そして羽化した彼らは、なんと夏の間、コナマイキにも避暑に行くのです。群れで涼しい高原に移動して夏を過ごし、下界に秋の気配が下り始めると、それを慕うように彼らも降りてきます。

 その他、様々な個性派が勢揃いしていますが、 ほとんどのアカトンボは、夏の暑い時代からひっそりとあなたの身近で日々を過ごし、秋にはきれいに色づいた姿を披露してくれます。名前を知ろうと思ったら、図鑑片手にかなり細かく見なくては分からない種が多いのですが、ほとんどのアカトンボは杭などの上にじっと止まってくれて、 素人勉強にもなかなか協力的です。
 慣れてくれば、常連さんはすぐに見分けがつくようになるもの。珍しい種類だけを探すのではなく、毎年のなじみを野外に歓迎し、無事を祝うのもなかなか趣深いものです。

 そんな彼らをじっくりと見たければ、身近な池に行くのが一番。できれば、いろんな植物が池の中にあって、コンクリなんかでお化粧されていない、荒っぽい雰囲気の所がベスト。じっくり腰を落ち着けて眺めていれば、やがて彼らの飛び交う姿と共に、 風にそよぐススキと虫の音を添えた、正しい「日本の秋」をフルコースで味わえるはずです。
 縁側にあぐらをかけない現代でも、こんな秋の過ごし方はいかがですか?


トップに戻る 【刈田悟史】

読者プレゼント!!!

貴重な生き物の写真が
PCデスクトップ壁紙になりました。

読者感想アンケートに答えて
無料ダウンロード!!!

感想ページへのロゴ。感想ページへリンクしています感想コーナーへ行く

 大学在学中、「環境サークルなちゅれ」に在籍したことをきっかけに、自然を見つめる面白さに目覚め、定職にもつかず、生き物の世界をふらふらしている。公園の警備員をやっているほか、ことあるごとに鳥を見たり、魚をおっかけまわしたり年齢不詳の時間を楽しんでいる。