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天空駈ける〜飛ぶということ〜

刈田悟史

オオタカの写真です
オオタカ


 空を駆け巡るというのは、男なら誰でも少年時代に一度は描く夢かもしれません。
 大空を羽ばたく一陣の風になる。風呂敷をマント代わりに首のうしろにくくり付けて、 ベランダから下を見下ろして、夢の空を羽ばたく自分と現実のギャップにふてくされたことがあるかもしれません。
 それこそが、パイロットが少年にとって大きな夢である理由であり、ライト兄弟が、リンドバーグが追い続けた何かなのでしょう。

 きっとそれは、はるかに上空を舞うタカの仲間などへのあこがれが、スタート地点に違いありません。
 当たり前ながら、動物の世界では、飛ぶというのは結構、一般的な行為の一つ。風切って空を駈けるというのは実に詩的ですが、 それぞれにいろいろな工夫と努力と、様々な現状が付きまとっているはず。道端の生き物たちを眺めながら、そちらの世界にちょっと一歩踏み込んでみましょう。

キアゲハの写真です
キアゲハ

 まず、空飛ぶ代表格は軽やかに空を駆け巡る鳥の仲間。でも、その実情はそんなイメージにふさわしいものばかりとは限りません。
 ペンギンはもちろん飛ばないし、ハクチョウなどヘビー級の鳥達はたいてい、ドタドタとかなりの距離を走り回ってようやく離陸する、 ちょいと涙ぐましい飛び方を披露してくれます。
 対極は、卵を温める時以外は 眠る時も飛びっぱなしのアマツバメの仲間。一口に「飛ぶ」といっても、その技量もスタイルも ピンキリのようです。

 もう少し手軽な雰囲気で飛びまわっているのが、虫の仲間でしょう。あるものは ふわふわと、あるものは軽快に、あるものは力強く、広い空間を駈けまわります。 そしてやはりこちらもいろいろなスタイルが勢ぞろいしています。
 まず思い浮かぶのは、チョウの仲間でしょうか。アゲハチョウなど、体の割に大きな羽を色とりどりに飾り立て、花から花へ緩やかに飛び交う姿は、自由を謳歌している ようにさえ見えます。
 ギンヤンマなどは、日中はひたすら辺りを飛び続け、待てど暮らせど一休みする姿はなかなか見られません。飛行技術も一級品で、わんぱく小僧が網をやたらめったらに振り回しても、 そこらのはっぱや棒切れがたくさん捕まるだけで、本人はいたって涼しい顔をしているのがごく普通です。

チョウトンボの写真です
チョウトンボ

 同じトンボでも、例えば、漆黒の羽が美しいチョウトンボはまるでチョウのようにヒラヒラ飛ぶ変わり者。 別名ひこうきトンボの名の通り、少し高いこずえをスーッと飛ぶ姿は、夏の風物詩です。
 そして、アリの仲間。普段は地べたの勤勉な労働者ですが、新しい女王アリは一生に一度だけ、新婚旅行の日に自分の巣から新天地へと飛び立ちます。
 他にも、重そうに飛ぶカブトムシや、光速で飛び去るセミの仲間。何百Kmもの距離を旅するトンボもいれば、ほとんど飛ばない小さな虫もいます。
 「飛ぶ」というのは、それぞれ先祖代々引き継いできた、いろんな方法、意義と理由を備えた1つの生活スタイルなのです。

 人間がどんなにあこがれて、しちメンドクサイ装備と結構な出費を覚悟しても、経験できるのは自由な飛翔とは程遠いものばかり。それならいっそのこと、そこらの草むらにでも出かけて、 自由自在に飛ぶ虫達でも見ながら、虫の気持ちになってみるほうが面白いかもしれません。
 野原に寝転がり、青い空を見上げたまま、上を飛び交う虫を眺めて…。やがて、ふと、まどろめば、大空を駈ける夢を見れるかもしれません。
 ちょいと現実世界に疲れたら、酒やタバコに逃げるより、想像の翼を大きく広げて、はるかな大空へと飛び立って見ませんか?


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 大学在学中、「環境サークルなちゅれ」に在籍したことをきっかけに、自然を見つめる面白さに目覚め、定職にもつかず、生き物の世界をふらふらしている。公園の警備員をやっているほか、ことあるごとに鳥を見たり、魚をおっかけまわしたり年齢不詳の時間を楽しんでいる。





天空ク駈ける〜飛ぶということ/オオタカ・キアゲハ・チョウトンボ