NIYONIYO ひとライブラリー

星川安之さん

星川やすゆきさんの写真です

【星川安之】1980年、大手おもちゃメーカー「トミー」に入社。目や耳などが不自由な子どもも遊べる「共遊玩具」の開発に携わる。会社に席を置きながら、91年、共遊品の推進を図るNPO団体「E&Cプロジェクト」を発足。

★障害児と遊びながら

−「共遊玩具」を作ろうと思ったきっかけは。

 大学4年の時に、友人と重複障害児の通所施設に通いました。そこで麻痺した手や足を一生懸命動かして感情を表現しようとする子供たちに出会い、表現しようのないショックを受けました。そこの保母さんが「この子供たちが遊べるおもちゃがもっと沢山あったら…」とぼそっと言ったのがきっかけです。

 トミーの入社試験で「障害のある子供も楽しめるおもちゃを作りたいのですが、そういう部署はありますか」と聞いたところ、「今はそのような部署はないが、近い将来できる可能性がある」と言われ入社を決めました。入社後、半年で運よく「ハンディキャップトイ研究室」が新設され活動を開始しました。

−玩具を開発する際に、ずいぶん多くの養護学校を回られたそうですね。

 会社が、最初の2年間は会社を離れて自由に調査してこい、と言ってくれたんです。全国200カ所あまりの養護学校や福祉施設、家庭を訪ねて一緒に遊び、体の不自由な子供が遊べた玩具、遊べなかった玩具を調べました。子供たちと一緒に遊んで、時には施設に泊まり込むこともありました。それでも最初のうちは「本当に理解し合えるのか、商品開発に結びつけられるのか」と不安でした。

 ある時、目の不自由な子供たちと一緒に点字トランプで遊んでいたら、日が暮れてきて、だんだん部屋が暗くなってきたんです。目が不自由なほかの子たちにはカードが読めて、自分だけカードが見えなくなってきた。けれども、そのことをなかなか言い出せなかったんです。いよいよ真っ暗になった時に、やっとのことで「電気つけてもいい?」と切り出したら、みんなに「なんだ、早く言ってよ」って軽く言われました。これをきっかけに、ふっきれた気がしました。一緒に接していれば理解し合えると感じました。

−どのような共遊玩具を開発したのですか。

 第一号は、止まっても音が30秒間鳴り続けるボールです。これまでボールの中に鈴などを入れて音が鳴るものはありましたが、止まると同時に音も止まって、目の不自由な子がボールを見つけに行くのは困難でした。そこでボールの中にICチップを内蔵して、ボールが止まってもしばらく音が鳴り続ける工夫をしました。ちょっとした工夫で、使い勝手がよくなるのです。

★「誰にでも便利」で、業界が統一基準

−その後、トミーに籍を置きながら日本玩具協会に活動の場を移し、業界全体に活動を広めました。

 例えばスイッチの「オン」に凸トツがあれば、電源が入っているかどうかが目の不自由な人にも分かる。ゲームの駒は色の違い以外に、手触りで自分と相手の駒を識別できるようにすれば、目の不自由な人でも一緒に遊ぶ事ができます。しかし、どこか一社でも逆のことを始めれば、すべてが無駄になってしまいます。そういう意味で、何らかの統一基準が必要でした。

 そこで日本玩具協会で一定の基準を設けて、目の不自由な子でも遊べる玩具に「盲導犬マーク」を、耳の不自由な子でも遊べる玩具に「うさぎマーク」を付けるよう、働きかけました。基準は「スイッチの『オン』に凸表示がある」「音と同時に光、振動、動きなどで遊びを盛り上げる」「手から離れた所へ言っても音で位置が確認できる」など。実際に目や耳の不自由な人が、使い勝手の善し悪しを審査します。1999年末で24社の約170点が「共遊玩具」に認定されています。

 目の不自由な子どもも遊べる玩具を占めす盲導犬マーク  耳の不自由な子どもも遊べる玩具を示すうさぎマーク

−共遊玩具ができても、実際には体が不自由な子とそうでない子が一緒に遊ぶ機会はあまりないのでは。

 それが現状です。障害のある子とそうでない子は、別々の学校で学ぶケースが多い。学校で一緒に学んだり遊んだりする中で、はっと気付かされることや、どうしたら目の不自由な仲間が生活しやすくなるかを工夫することが、共遊玩具を普及させる原動力になりうるのですが。いずれにせよ、より多くの人が身近な日常生活の出来事として捉えることが普及のカギです。

−その後、玩具業界にとどまらず、ソニーや花王など異業種大手の社員も巻き込んだNPO団体「E&Cプロジェクト」(本部東京)を立ち上げた狙いは。

 それぞれが企業に在籍しながら活動するのがポイントです。企業や団体に身を置くメリットを最大限利用しながら、体が不自由な人にもそうでない人にも便利な「共用品」を広めようと考えました。

 障害者のみを対象にした商品は市場規模も小さいので、なかなか事業化が困難です。そこで「誰にでも便利な」という発想で、あらかじめ開発の段階から商品のデザインに組み込んで大量生産すれば、普及しやすいと考えたのです。シャンプーの側面についているギザギザの凸表示がその一例です。大企業が動けば、インパクトが大きい。一方、大量に売れるのであれば、企業側にもメリットがありますし、「バリアフリー」が企業のイメージアップにもつながります。

 「E&C」は昨年4月に財団法人「共用品推進機構」に発展させた形で引き継がれました。現在は、バリアフリーのISO規格づくりにも、力を注いでいます。日本が世界に提案するISO規格です。E&C(共用品推進機構)の究極の目的は、共用化=バリアフリーが進んで、我々が必要なくなることです。我々は、解散に向けて日々活動しているのです。

(聞き手 豊田百合枝)

共用品推進機構については
http://kyoyohin.org/

日本玩具協会のページは
http://www.toynes.or.jp/totsu7.htm


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