NIYONIYO    ランドスケープアートの地・山形県新庄

粟野ユミトさんの作品 風の琴の写真です

風の琴 粟野ユミト作

 山深い山形県最上地方の盆地に位置する新庄市。この地で秋に行われる「最上環境芸術祭 ランドスケープアート展」は、大地そのものが芸術空間になる珍しいアート展だ。鳥海山や月山を眺める田んぼの真中に、よしで作った塔が出現したり、田んぼ一面を七色のひもが埋め尽くしたり…。

 山形新幹線が昨年12月、新庄まで伸びた。新幹線の延伸をにらんで、最上地方は「田舎らしさ」「自然の豊かさ」をアピールし、人を呼び集めようと、まちづくりに悪戦苦闘してきた。「金山杉」などで知られた林業、最上川の舟運は時代とともに変わり、新庄は交通の要所のにぎわいが薄れた。ランドスケープアート展は、過疎化に悩むこの地方の人々の知恵の一つ。長い時間を静かに見つめてきた田んぼは、自分の上に描かれる芸術作品をどう受け止めているのだろう。気の遠くなる時間を経てきた山々は、ほほ笑みながら見守っているのだろうか。

 大きな糸電話を仕掛け、盆地をめぐる風の音をとらえる「風の琴」を出展した粟野ユミトさんと、わずかに話す機会があった。「自然の風景の中では、農作業で使う何気ない稲わらの束などの方が、頭で考えてつくった人工物より、よほど美しかったりする」「大自然もいいが、都市の生活者は、コンクリートの空間に懐かしいにおいを感じる。それぞれの空間に懐かしさがある」

 印象に残ったそんな言葉のはしばしから、地域を形作ってきた歴史に思い当たった。無数の無名の人々の暮らしが、山や川や海、木造や、今はコンクリートの建造物、伝統行事などを含む「地域」という総合芸術空間を成立させてきた。そうした地域の時空に共振させられてしまうとき、旅をしている、旅人なのだという淡い思いが湧いてくる。

                           (会田正宣)


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